2016-02-13 20:59:33 「早稲田大学孔子学院中国語教師研修プログラム2012」を受講して 



3月21日~24日午前午後各3時間ずつ計4日間、「早稲田大学孔子学院 中国語研修プログラム2012」が開催された。対象は現職の中国語教師および中国語教育に興味のある社会人及び大学院生で、毎回80~100名の参加者があり、大盛況であった。


1日目の午前の講座は古川裕先生(大阪大学教授)の「漢語語法的感性教学」。中・上級の学生に対して「文法の感性的認識」という角度から教えることで中国語の語感をさらに高めることができるということから、(1)中国語の「主語」の特殊性(中国語の主語は英語と異なり動作のシテを代表するとは限らず、注目すべきは話題つまり動作行為が行われる背景であり、「空間性」を持っている)、(2)中国語の「補語」の特殊性(中国語の補語は補足的な要素ではなく、文の語態を決定する重要な要素である)、 (3)前置詞「把」と助数詞「把」について(その間の共通性及び個別性をよく認識しながら教えていくべき)という3点を中心に解説し、NHKのTV講座を担当されていた時に作成されたという図式等も紹介され、大変わかりやすく文字通りの「感性教学」であった。


午後は楊凱栄先生(東京大学教授)の「漢語語法功能教学法――从学生的偏誤着手」。(1)「了」について、(2)助動詞「会」「能」「可以」の語義区分について、(3)連用修飾語と補語の問題について、(4)常用副詞の中国語と日本語の違いについて「也」「还」「再」「总是」「老是」「经常」「绝对」等を例に挙げて解説、(5)方向補語と目的語の位置の問題について、それぞれ具体的事例を挙げて詳しく解説された。これらはいずれも日本人に中国語を教える中で必ず教師がぶつかる問題なので、大変参考になった。


2日目の午前は楊達先生(早稲田大学教授)の「多媒体電脳與漢語教学」。コンピュータの繰り返しに強くまた間違えても恥かしくないという利点を生かしながら、それを認知心理学の理論に基づいていくつかの段階を経てDigへと教材化し、その教育効果について試験の成績や中検合格レベル等学生達の具体的成果事例を提示するとともに、実際教材の一課分を資料として配布解説し、わかりやすく啓発される点が多かった。そのまま全ての学校や教室において実現するのはなかなか難しい点もあるかもしれないが、特に認知心理学に基づく教材化や教材の提示法や授業の進め方という面では、誰もが実践することができる点も多く大変参考になり、またそうした教材化を試みてみようという後続が期待される内容であった。


午後は平井和之先生(日本大学教授)の「現代漢語語音教学」。発音教育の特徴、間違いについて、母音の教え方、子音の教え方、声調の教え方等を一つ一つ例示しながら注意すべき点を喚起し、丁寧に解説された。日本人に中国語を教える時、最も難しいのはやはり発音と思われるが、スピーチコンテストの練習などを例に発音の修正ができた例を紹介されたが、最終的にはやはり練習がものを言うという先生の言葉には説得力があった。


3日目の午前は施正宇先生(北京大学副教授、早稲田大学孔子学院副院長)の「対外漢語字詞教学法」。『説文解字』及びその注釈により、漢字をその形や意味、音から系統的に分類し、それに基づいて漢字や単語を覚えていくという教学方法は大変興味深く、漢字圏でない留学生はもちろん日常的に漢字を使用している日本人学生にとっても、また新たな発見がある授業であることがよくわかった。特に、学生がそれらの系統的に学んだ漢字や部首(例えば「有」「右」「左」「酒」「馬」等)を用いて文章を作るという宿題例は大変興味深く、また参考になった。


午後は王順洪先生(北京大学教授)の「日本人漢語学習的特点及其教学原則與方法」。立命館大学孔子学院副院長である王先生は、日本人の漢語学習に関して教学および研究の経験が豊富であり、日本人の民族性や漢字を生かした教育法というその内容については多くの日本で教えている中国人の先生方にとって納得がいき参考になる点が多かったのではないか思われる。さらに先生のユーモア溢れる人柄や授業に対する取り組み方には、教師としての資質や基本的な姿勢を改めて教えていただいた思いがする。


最終日の4日目の午前は張英先生(北京大学教授、北京大学対外漢語教育学院学院長)の「漢語教学中的文化教学及方法」。文化とは何か(概念)、なぜ文化を教えるのか(理由・根拠)、どのような文化を教えるのか(範疇)、どのように文化を教えるのか(方法)、そして文化教育の視点と方法について、単語や文を例示しながら系統的かつ明快に解説された。特に印象に残ったのは、文化教学とはあくまでも学習者の文化を越えたコミュニケーション能力を育てるために行うのであって、文化そのものを教える授業ではないという指摘である。これは特に中級以上の教材を作成または使用する際、十分注意しなければならないことであろう。


午後は劉頌浩先生(北京大学教授)の「対外漢語教学中的練習設計問題研究」。練習問題作成に関する理論的研究の必要性を述べた後、出題の5つの基本原則(形式・編集・順序・種類・本文との関係)について実例を提示しながら解説された。その際、身近な事例から設問を作成する、必ずしも数をそろえなくても二択・三択・四択どれでもよい、討論の余地を残し必ずしも答えは一つでなくてもよい等々、参考になるアドバイスが多かった。


以上、各講座の内容について簡単に紹介させていただいたが、内容は勿論、レベル・種類・分量ともに大変豊富ですばらしく、これらを無料で受講できることの幸せに全ての受講者が感謝していることは間違いない。改めて講座を担当して下さった先生方、ご尽力下さった早稲田大学孔子学院のスタッフの皆様方に心より感謝したい。 (谷川栄子)